logo

鳥や虫たちは自由に人の住まいへと入り込み、私たちはそれを拒むどころか、かえって美しいさえずりや羽音に心を和ませ、自然の訪れを喜ぶことすらある。しかし、同じ「生き物」である人間同士となれば、状況は一変する。無断で他人の家に入れば犯罪となり、社会秩序を乱すものとして厳しく罰せられる。さらに、国と国のあいだには国境線が引かれ、人の移動はパスポートやビザといった制度によって制限されている。

その一方で、渡り鳥は季節の移ろいとともに大陸をまたぎ、国境や法律に煩わされることなく、ただ本能と自然の理に従って自由に飛翔する。そこには、境界を意識することすらない、伸びやかで普遍的な生命の営みがある。

人はしばしば「万物の霊長」として自らを誇る。しかし現実を見れば、むしろ自然界の生き物たちのほうが、より大らかで自由な存在に映る。人間だけが作り出した社会制度や境界線に縛られ、他者を排除し、自らをも制限してしまう。そうした不自由さは、究極的には人間の心に根差す自己中心性から生じたものである。自己を守るために築いた壁が、同時に人間自身を閉じ込め、狭量さを露呈させているのである。

そして現代社会においては、この自己中心性がますます深刻な問題となっている。国家間の対立、経済格差、環境破壊、差別や排他主義――いずれも根源をたどれば、人間の利己性と独善に行き着く。国際機関や条約、最新のテクノロジーがどれほど発展しても、私たちが自己中心性を克服しない限り、対立は形を変えて繰り返されるだろう。

とりわけAI時代においては、この問題はさらに複雑化する。AIは人間の知性を模倣し、社会を効率化する大きな力を持つ一方で、使う人間の価値観や利害に強く左右される。もし人間が自己中心性から脱却できなければ、AIは単なる便利な道具を超え、偏見や差別、権力の濫用を加速させる危険性がある。テクノロジーそのものは中立であっても、それを運用する人間の心が利己的であれば、文明は進歩ではなく破局に向かうだろう。

結局のところ、恒久的な平和や持続可能な社会は、外部の制度や技術の発展によってのみ築かれるものではない。真に問われているのは、私たち一人ひとりが自己中心性を克服し、他者との共存を可能にする心の成熟を果たせるかどうかなのである。もしそれを怠れば、未来を生きる世代に残されるのは、技術の恩恵ではなく、深刻な分断と混乱であるだろう。私たちが今なすべき選択は、次の世代が安心して生きられる世界を残すために、自己中心性を超える人間の在り方を確立することにほかならない。